『誘導電動機ってカッコいいな……こいつを自由に制御出来たら良いのに……』
というわけで始まりました。三相インバーター制作記録です。大学に入って趣味に使える時間が増えたので,「電子工作の勉強も兼ねて三相インバーターを作ってみよう」と思い立ってからすでに半年も経ってしまいました。サボってたわけじゃないんです…ほかにもいろいろやってたんです本当ですよ。
まだ途中ですが,回路図です。制御にはPIC16F1783を使う予定ですが,見づらくなりそうだったのでその辺りは省いています。ここまでで一番理解に苦しんだのが,ゲートドライバ(回路図上で薄いクリーム色になっているパーツ)でした。今回は,理解を深めるために駆動回路についてまとめました。
パワーMOSFETやIGBTは電圧駆動素子ですが,内部に浮遊容量が存在するため,高速にスイッチングを行うためには電荷を素早く流し込んで内部の浮遊容量を満たしたり,貯まった電荷を引き抜いてやる必要があり,それを行うのがゲートドライバです。(ゲートドライブICとも呼ばれます)
概要はこんなもんですが,一口にゲートドライバと言ってもハイサイドドライバとローサイドドライバの二種類が存在します。んで,こいつら何が違うかというと,負荷のプラスから電流を流しこむためのパワー半導体を駆動するために使うのがハイサイドドライバ,GND側から電流を吸い出すために使うのがローサイドドライバということなんですが…… つまり,上の三つがハイサイドドライバで,下の三つがローサイドドライバです。こんな感じで↓
ハイサイドドライバもローサイドドライバも素子を駆動するという目的は同じなので、上の回路図ではハイサイド・ローサイドの両方にTLP250というゲートドライバを使っています。
ゲートドライバの電源は主回路電源とは別に確保する必要があるのですが、これが少々厄介です。ハイサイド側はIGBTのエミッタ端子がモーターへの出力となっており、時間変化によってハイサイドゲートドライバのマイナス側電位が変化してしまうため、ハイサイドドライバの電源はフローティングにして各アームごとに用意しなければいけません。一方で、ローサイド側はIGBTのエミッタ端子が主回路電源のマイナス側に繋がれていて電位は変化しないため、3つのゲートドライバで電源を共有できます。
ゲートドライバだけで電源を4つも確保するのは大変なので、上の回路ではブートストラップ方式を使用して1つの電源で6つのゲートドライバを動かすようにしています。
以下がブートストラップ回路です。ここではローサイド側の -E/2[V]を基準電位として考えます。
ブートストラップ回路では,コンデンサを利用してハイサイドドライバ用の電源を作っています。下のアームがオンの時にコンデンサが充電され,ハイサイドドライバの電源として利用されます。上下アームのデューティーが極端に違う場合や,スイッチング周波数が低い場合には用いるのが難しいようですが,一般的なインバーターとして使用する以上は問題になることはないと思います。
上下アームのデューティが極端に違う場合や,スイッチング周波数が低い場合には用いるのが難しい.
1:入門インバーター工学:P.73
因みに,TLP250にはフォトカプラが組み込まれているため直接マイコンの出力端子を繋いでしまっても大丈夫ですが,ほかのゲートドライバでは信号入力側が絶縁されていないものが多いようなので,その場合はマイコンとゲートドライバの間にフォトカプラを挟む必要があります。
インバーター制作記録第一回目はここまでです。次は,細かいところ(マイコン用の電源とか)を作る予定です。
※修正(2018/7/29):ゲートドライバの電源について、誤った表記をしていたので修正しました。
【参考文献】
- 森本雅之,入門インバーター工学,森北出版株式会社,(2015)
- 見城尚志・高橋久,インバーター実用回路の設計と駆動ソフト,総合電子出版社,(1992)