「でもさあ、あの講義って自動車免許のやつだし最悪間に合わなくても良くない?」

僕は若干諦め始めているが、一応遅刻しないように友達と二人で走っている。教室に向かっているはずなのに何故か本屋に入る。

「うわっ、今日ってこっちじゃなくね!?」

急いで本屋を出ると、階段から別の友達が降りてきた。(割と体格が良い奴)

「ねえ、今日の講義ってどこでやるんだっけ」

「階段上って三階だよ!」

そう言って友達は階段を駆け上がった。僕もすかさず追いかける。その時,既に高校指定のジャージを着ていた。

「あいつこんなに素早かったっけか?」そんなことを思いつつ、必死で後を追う。

階段を登りきると、屋上のようなところに出た。「どう考えてもここじゃないだろ……」と思っていると、先を走っていた友達が屋上の隅っこの建物に入っていくのが見えた。

どうやら体育館のようだ。僕が入ってきたところから見て左側に階段状の座席がある。観客席なのだろうか。何故か女子生徒しかいない為、この中を走り抜けていくのは少し気が引けたが、講義が掛かっているのだから行くしかない。

先を走っていた友達は既に見えなくなってしまった。「僕が入ったのが観客席の一番下だから、取り合えず上に行けば良いのかな」そんなことを一瞬で判断して、観客席中央の階段を駆け上がった。「走って暑くなってきた……」走りながら、長袖のジャージを軽く捲りあげる。

「それにしても本当に女子生徒ばかりだな…」

観客席が男女で分かれているのだろうか。だとしたらここを走り抜けているのは結構マズイのではないか。とはいえ、走っている本人はそんなことを気にしている暇はない。

観客席といっても,そこまで大きいわけではなかった。10段程度だろうか、はっきりとは分からないが大体そのくらいだ。

体育館を抜けると何故か校舎の外に出た。屋上から入ったはずなのに地に足が付いているというのはどう考えてもおかしいが、僕は見失った友達を追いかけるのに必死だ。

ふと、視界の端で近くの建物に駆け込む人影を捉えた。どこに進めば良いかわからなかったから,取り敢えず追いかけてみることにした。

「やっと教室が見えた……えっ…?」

教室に辿り着いたかと思えば、中にいるのは小学生だった。

どうなっているんだ、夢の中とはいえ流石に違和感を抱く。

(なんか見つかったらヤバそうなんだけど…)悪事を働いた覚えは無いが、高校のジャージを着たまま小学校の廊下にいるのはものすごくまずい気がした。

入ってきたときは気付かなかったが、入り口のすぐ近くの部屋は職員室になっているらしく、大人が4,5人いる。僕は見つからないように、床に手をつき四足歩行状態で脱出を試みる。

「入ったときは平気だったのに……」などと思いつつ進んでいると、なんとか外に出られた。

これからどうしようか。この時の僕は講義のことなど全く考えていなかった。

(終)